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◎ 不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か  米原万里



新潮社 1997.12.24
同時通訳者の頭の中って、一体どうなっているんだろう?
異文化の摩擦点である同時通訳の現場は緊張に次ぐ緊張の連続。思わぬ事態が出来する。いかにピンチを切り抜け、とっさの機転をきかせるか。
日本のロシア語通訳では史上最強と謳われる著者が、失敗談、珍談・奇談を交えつつ同時通訳の内幕を初公開!
「通訳」を徹底的に分析し、言語そのものの本質にも迫る、爆笑の大研究。
作者の米原万里さんは ロシア語通訳の第一人者と言われる方らしいのだけれど 通訳の世界の裏側も表側も とても分かりやすく楽しく描いてくださっている

通訳の方ってほんと頭が良い方々なんですね~
専門的な知識の必要な通訳は その分野の語学に通じた方がやられているのかと思いきや 文学界の会合ですらプロの通訳業の方が駆り出されるらしい



米原さんが書いてらした日々の仕事内容をざっと紹介すると…(文章も適当に端折っています)

シベリアの奥地、地球の寒極オイミャコンの近くへのテレビ取材に同行して真冬の一か月を過ごしたことがある。私が行った時点で一番寒かった日がマイナス五十九度。眼の表面の水分が凍り、瞬きするとシャーベットが出来ていくのを体験した半年後、旧ソ連の当時はトルクメニア共和国と呼ばれた国で、日本からエアコン設備を輸出するための商談の通訳に雇われた。ここでは炎天下プラス七十度というのを味わった。

近視矯正手術(たぶん 今で言うシーレックですね)を受けに訪ソする患者さんに付き合って、眼球の構造と”各部位”の名称を必死で丸暗記し
帰国した翌日は、万国家禽会議で、「卵のコレステロールのほうが豚のコレステロールに比べてどれだけ優れものであるか」とか「鶏をあまりにも非人道的に扱っている。せめてもう少し鶏の福祉を考えるべきだ。住居環境を良くすべきだ。」という話を「ああ、どうせ絞めて食ってしまうのに」と思いつつ、もちろんそれをおくびにも出さずに通訳していたかと思うと、
夜はボリショイ・バレエのプリマのインタビューがあるので、「パ・ド・ドゥ」と「パ・ド・トロア」はどう違うのかなどなどを予習し、
翌日からは二日間のセミナーで、「日本の天皇制とロシア帝政の比較」とか「日本における中国研究とロシアにおける中国研究の比較」とかいうテーマの歴史学者達の報告の通訳なので、文科系出身者としては、やっと一息つけると期待していたら、中国語の固有名詞の発音が日本語とロシア語とでは想像もつかないほど隔たっているため、通訳も、したがって会議も混乱した。

次の日は、日本から輸出する養魚施設に関する商談の通訳で、魚が成長する過程で「仔魚から稚魚になり、稚魚から幼魚になり、幼魚から成魚になり、そして子を産む親魚になる」、だから、なまこの稚魚にあたる時期を、「稚なまこ」ということを日露両語で血まなこになって覚え、
さらに次の日は東京都の下水施設視察に同行し、そこで処理された水を飲んでみないかと勧められて閉口したり、
翌週は「旧石器時代後期におけるユーラシア北部の細石器文化」というテーマのシンポジウムの通訳を引き受けたため、さまざまな細石器の名称や、製造技術、石器が出土する地層、遺跡の名前を、「ああこれをせっかく覚えても、わが残りの人生のうちで二度と使うことはあるまい」と思いつつも懸命に頭に詰め込む。

それが終わると、裏千家の家元に同行して「モスクワ大茶会」で「わび」、「さび」、「一期一会」などという自分でもよく分かっていない概念をロシア人に伝えるのに四苦八苦し、
帰国すると、「防衛問題」に関するシンポジウムが控えているので、日露間の防衛問題の要点と兵器の名称を時差ボケの頭にたたき込む。
それが無事終了して、さる要人の記者会見の通訳をした後、一息つく暇もなく、
「恐竜がなぜ絶滅したか」というソ連邦科学アカデミーのその道の権威の講演通訳の準備に取りかかり…


きりがないので ここらへんでやめておくけれどw
これを読んで 通訳の凄さと そして米原さんの文章の素晴らしさ(無駄がなく、適切で、ユーモアと機知に富んでいて…)が解っていただけると思います


米原万里さん 他の文章もぜひ読んでみたいです!

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