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◎ 虚ろな十字架  東野圭吾



光文社 2014.5.23

娘を殺されたら、あなたは犯人に何を望みますか。

別れた妻が殺された。
もし、あのとき離婚していなければ、私はまた、遺族になるところだった──。
東野圭吾にしか書けない圧倒的な密度と、予想もつかない展開。
私たちはまた、答えの出ない問いに立ち尽くす。

いい作品ですね テーマもいいし掘り下げ方もいい
人の命を奪ったことに対する償いはどうやったらできるんだろう
ううん 償いなんて出来るわけはないけれど…


たとえば自分の子供が殺されたら たいていの親は殺した人間を自分の手で殺したいと思うだろう 法治国家においてそれが出来ないのなら 中原と小夜子のようにせめて法に則って死刑にしてほしいと願うだろう

小夜子の思いはストレートに心に響いてくる
「私は、たとえどんな理由があろうとも、人を殺した人間は死刑になるべきだと考えています。命とは、それほど大事なものだと思うからです。どれだけ反省しようが、どんなに悔いようが、失われた命は戻ってはこないのです」
「ー略ー 人を殺めた人間の自戒など、所詮は虚ろな十字架でしかないのに。けどたとえそんな半端な十字架でも、せめて牢屋の中で背負ってもらわねばなりません。この罪を見逃せば、すべての殺人について見逃す余地が生じることになります。そんなことは絶対に認められませんから」


でも東野さんはこんな側面を描いている
中原、小夜子夫妻の娘を殺した犯人が死刑を求刑された時 弁護人が上告を取り下げた理由を尋ねた時の犯人の言葉である
「それはどういう意味かと尋ねました。自分のしたことは死刑に値すると思うのかと、と。すると彼は、そんなことはわからない。裁判官が勝手に決めればいい。死刑も悪くないと思うのは、どうせ人間はいつか死ぬのだから、その日を誰かが決めてくれるというのなら、それはそれでいいという気になってきた、という意味だといいました。」

そして中原に尋ねます「(死刑が)執行されたことを知って、何か変わりましたか」
「いいえ」中原は即答した。「何も、何ひとつ変わりません。ああそうなのか、と思っただけです。」
そして「死刑は無力です」と続ける・・・


犯罪者側からの視点で描かれるのは
若い頃の過ちからその罪の重さに人生をまともに歩めない沙織、その罪を償うために自分に出来うる事をすべて行ってきた史也。

そんな史也を弁護する妻の言葉です
「-略ー 主人は21年前に一つの命を奪ったかもしれません。でもそのかわりに二つの命(私と息子)を救いました。そして医者として多くの命を救い続けています。ー略ー 身を削り、小さな命を救おうとしているんです。それでも主人は何の償いもしていないといえますか。刑務所に入れられながらも反省しない人間など、いくらでもいます。そんな人間が背負う十字架なんか、虚ろなものなのかもしれません。でも主人が背負ってきた十字架は、決してそんなものじゃない。重い重い、とても重い十字架です。中原さん、かつてお子様を殺されたご遺族としてお答えください。ただ刑務所で過ごすのと、主人のような生き方と、どちらのほうが真の償いだと思いますか」


そして 物語の最後にこう締めくくっている
「人間なんぞに完璧な審判は不可能、ということかもしれませんね」


被害者側の痛み、死刑の意味、殺人の償い・・・難しい問題を 東野さんらしい優しく力強い物語でバランスよく描かれていると思います




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コメント

No title

東野さんの作品で、このような作品すきです。
ガリレオとかよりも。
命の大切さについて考えないといけないですね(~_~;)

No title

☆夕凪さん
(¨)(..)(¨)(..)ウンウン 私も東野さんの社会派小説大好きです!

なにより驚くのは 色々な社会問題をマスコミなどで騒がれる何年も前に題材として扱ってられる事
そして 答えを決めつけるのではなく読んだ人間それぞれが考えさせられるような描き方をしている事

やっぱり凄い作家さんですね

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