記事一覧

☆ 孟嘗君 1~5  宮城谷昌光

637abbeb.jpg

 講談社  1.2 (1995/9/20)、3 (1995/10/17)、4 (1995/11/2)、5 (1995/11/24)

➀1本
の槐(えんじゅ)の樹からすべては始まり、函谷関(かんこくかん)に至る!青年風洪の光と夢に祝された華麗なる物語世界。
青欄はこの月のはじめに男子を産んだ。そのとき田嬰は不在であり、10日ほどして帰ってくると、わが子の誕生を大いに喜び、青欄をねぎらい、この男子に文という名をあたえた。ところが数日後に、荒々しい足どりで青欄の部屋をおとずれた田嬰は、恐ろしい形相で、「何日に生まれた」と、念をおすように問うた。青欄はおびえがちに、「5日でございます」と、こたえた。「5月5日の子か。やはりな」田嬰は吐きすてるようにいうと、自分の子をひとにらみして、青欄のほうへ目をもどし、「殺せ」と、低い声でいった。──本文から


数奇なる運命の鮮やかな転変
送別の宴はおわった。夜明けまであまり時がない。夜具にはいった風洪、いや白圭が、ねむりに沈もうとしたとき、人のけはいがした。人のけはいは、足音をともなっていた。――翡媛か。部屋の空気がゆれた。そのゆれは白圭の夜具を浮かし、しなやかなものをすべりこませた。ことばはない。……しずかなたゆたいがつづいている。女ははげしいしあわせに襲われた。なにかがくだけたように感じた。が、そのくだけたものは惜しいわけでもなく、くだけたもののかわりになにかが明瞭にみえてきそうであった。――本文から

③三国志を超える男と女の人物造型
うねる中国、男女の機微盛衰。天才兵略家孫びん(そんびん)、美貌の宰相鄒忌(すうき)、名将ほう涓(ほうけん)さらに白圭ら、若き田文をつき動かす傑出した人間達

前方に大樹がみえた。梢のかたちはまだみえるのだが、枝は闇に融けはじめている。──妙な木だな。ほう涓は目を細くした。木が白い。かれは馬の速度をゆるめ、大樹に近づいた。字が書かれているようである。ほかの騎馬が炬火をともすまえに、ほう涓は鑚木をとりだして、火をつくった。その火をたかだかとあげ、「ほう涓はこの樹の──」と、読んだところで、斉軍の1万の弩から矢がはなたれた。山が吼えた、とほう涓にはきこえた。それが斉兵の喚叫であることを知ったほう涓は、地にすわったまま、おもむろに剣をぬき、「ついに豎子(じゅし)の名を成さしめたな」と、闇のなかでこちらをみつめているにちがいない孫びんを豎子とあざけり、みずからをもあざけって、その剣で首を剄(き)った。──馬陵の戦い


④【諸子百家、大鳴動】
逆流にあえぐ宿命の美女!食客説客、風のごとく去来する戦国の中国を、億万人に1人の清々しい声で相渉る青年田文の愛と風格!
別離の宴を閉じた尸佼(しこう)は、馬車に乗るまえに、田文(でんぶん)を招き、「やがて天下は文どのを中心にうごくようになると思う。そのとき、仁義をけっしてお忘れにならぬことです」と、おどろくべきことを、おだやかにいった。「はい」と、こたえた田文は胸苦しさをおぼえた。「公孫鞅(こうそんおう)の失敗は、その仁義をおろそかにしたところにある。白圭の成功は、おそらく、いのちがけで仁義をまもってきたことにある。仁義ということばは、中華がもちえた最高の理念をあらわしている。それがわかる者が天下を制御してゆくのです」「ご教示、かたじけなく……」尸佼は馬車に乗った。天空から降ってくる光が明るい。野山は新しい緑で沸きかえっている。そのなかを尸佼の馬車の影が小さくなっていった。――[壮者の時]


⑤【新たな宮城谷伝説、完結】
高きを求める英知と愛の生涯!いま函谷関(かんこくかん)の暁闇を破る者は?人間の大いなる心の成長を風韻高く描ききった文字通り最高の名品!
白圭(はくけい)は微笑していた。「文どのか」涸(か)れた声ではない。いのちのうるおいが残っている声である。「父上――」田文(でんぶん)は白圭の手をさぐった。その手は乾いていた。自分を大きくしてくれた手は、この手だ、とおもうと田文は涙がとまらなくなった。白圭はしみじみと田文をみている。「文どの、人生はたやすいな」「そうでしょうか」「そうよ……。人を助ければ、自分が助かる。それだけのことだ。わしは文どのを助けたおかげで、こういう生きかたができた。礼を言わねばならぬ」「文こそ、父上に、その数十倍の礼を申さねばなりません」「いや、そうではない。助けてくれた人に礼をいうより、助けてあげた人に礼をいうものだ。文どのにいいたかったのはそれよ」白圭はそれから洛芭(らくは)や斉召(せいしょう)などに顔をむけ、――田文がいちど別室にさがったわずかなあいだに、息をひきとった。――本文・函谷関から



「楽毅」で宮城谷作品に魅せられ この「孟嘗君」に
またまた 超おもしろかった!!!

風洪(白圭)の魅力的なこと…♪
“人はこんなふうに生きるものだよ”と教えられる作品です

スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

にゃ~ご

Author:にゃ~ご
読んだ本を忘れないよう 備忘録^^; TOP写真はパリの本屋さんです♪

管理メニュー

カテゴリ

ブロとも申請フォーム