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◎。銀の猫  朝井まかて




文藝春秋 (2017/1/25)
お咲は、年寄りの介護をする「介抱人」。
口入屋「鳩屋」の主人・五郎蔵とお徳夫婦に見守られ、誠心誠意働くお咲は引っぱりだこだが、妾奉公を繰り返してきた母親のだらしなさに振り回され、悩む日々―。そんな時、「誰もが楽になれる介抱指南の書」を作りたいという貸し本屋・佐分郎太から協力をもとめられた。
「いっそ、ぎりぎりを攻めるってのはどうですかね、お咲さん」―「いいかも。そのぎりぎり」。

長寿の町・江戸に生きる人々を描く傑作時代長編。
江戸の町の老人介護のお話 今の時代にぴったりの話題です
江戸時代も高齢者問題って深刻だったみたいですね…

=江戸の町は、長寿の町だ。
 子供はふとした病であっけなく亡くなるけれど、
 五十過ぎまで生き延びればたいていは長生きで、
 七十、八十の年寄はざら、百歳を過ぎた者もいる。= だそうです

人はどう死んでゆくか 家族はどう看取るのか…
老人介護の実情を 本人、家族、介護人 色々な方向からありのままに捉え どんなふうにその時を過ごせばいいのかを探る 誠実な物語だったと思います 

介護人として咲が関わったお話だけでなく 咲と母親の問題、亡き舅への想い、介護人など雇えない同じ長屋の庄助と母親の暮らし、それを助けるおぶん(今で言うなら シニア世代の介護ボランティアかな)、口入屋「鳩屋」のちょっと強欲な(笑)在り方、そして『誰もが楽になれる介抱指南の書』の作成も絡めて うまくまとめてあると思う

今の私には 身につまされるようなお話ばかりでした^^;





=覚書=
咲が介抱人として行った女隠居 74歳
数年前に眼を病んでから外出しなくなり足が萎えて身を動かすのに不自由になった

身体を動かすのが不自由になった年寄は癇癪を起すことも多いのに このご隠居は癪を立てる事もなく、むしろ咲にまで気を使い 目薬の世話をするだけでも「すまないねえ」と詫び、目尻に涙を溜めるのだ
「お咲さんだけが、頼りですよ。あんたの来てくれる日が、どれだけ待ち遠しいことか。あんたが帰っちまうと、もう心細くって」 

「倅夫婦もどういう料簡をしてんだか。赤の他人に任せっきりで3日も顔を見せないって、お恥ずかしい限りですよ」
咲:「ご隠居さん、介抱人はお身内に身体を休めて頂くために雇われているんですから、そういうお気遣いは御無用にお願いします」
「でも、情けなくって」と、隠居はうなだれる。

そして奥からは、三味線の音が響いてくるのだ。 倅夫婦は年頃の娘の稽古事には熱心で、しじゅう三味線や琴、舞の師匠を招いている。老いていくばかりの親ではなく、我が娘の行末に手間暇をかけているらしい。

ー中略ー

3日目の介抱を終えて(この物語の介抱人は3日泊まり込んで面倒をみて1日休むという勤務体制になっていました)倅夫婦の居間に挨拶に行くと 倅夫婦と孫娘が朝餉の最中だった。
「ご苦労さん」 倅はそう口にしたが 女房と娘は黙したまま。お咲の顔を見ると 寝付いている姑を思い出す、朝から鬱陶しいと言わんばかりの素っ気なさ。

咲が「ご隠居様の汗疹が酷いので、日に一度は身体を拭いて膏薬を…」というと
女房が箸を叩きつけるように膳の上に置き、眦を吊り上げて「奉公人の分際で、指図ですか」・・・


ここまで あぁよくある 年寄をないがしろにする家のお話なのかと読んでいたら
その女房はこう続けた

「おっかさんはどうせ、私が何もしないって言挙げしてんでしょ。そんなわけ、ないじゃありませんか。ひと月のうち、鳩屋さん(咲の働く口入屋)に来てもらっているのは半分ほどですよ。あとの半分はこの私が看てるんです。目薬の世話をして目やにを拭いて、むろん汗疹のことだって承知してますよ。だから躰も拭くし、ふだんは寝入るまで枕元にいます。おっかさんだっていつもは有難いって、言い暮らしてるんです。あんただけが頼りだよってでも親戚やご近所が見舞いにきたら、倅夫婦は娘に手一杯で、わたしには手が回らないんだ、心細くってたまらないと訴える

「皆、その片口を信じちゃって、そりゃあ陰口を叩かれて。周りもいっそ面と向かって言ってくれたらば申し開きもできるけれど、奥歯に物が挟まったような言い方しかしないもんだから、どうしようもないじゃないの。おっかさんはそうやって他人の気を惹いて、情につけ込む。自分だけが気の毒がられていたいんだ」

倅:「いいかげんにしないか。仮にも私の母親だよ」

「だから介抱人を雇う事にしたんじゃありませんか。でないと、ここが冷えちまってどうしようもなくなる」
女房は俯いて、自分の胸に握りしめた拳を当てた。

もうおっかさんの目の前で、笑っていられなくなる
娘が母親のそばに寄り、その背中を黙ってさすっていた。



********

この女房 そんな状態でも お姑さんにはちゃんと笑って接してあげているんだ…

その笑顔を作る為にも 介抱人が来ているときはすべて忘れていたいという気持ち
とてもよくわかります 
お母さんの日頃の行いを聞いたら 介護人が来てくれている間位はやりきれない思いを忘れていたい… と家族が離れに足を向けない気持ちもわかります
でも 外から見ると↑の前半だけを読んだように とんでもない家族に見えるのですね…

身につまされて 思わず涙が流れてしまいました…

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