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◎ タンゴステップ 上下  ヘニング・マンケル 柳沢由美子訳



















                         東京創元社 (2008/5/23)
男は54年間、眠れぬ夜を過ごしてきた。森の中の一軒家、人形をパートナーにタンゴを踊る。だが、その夜明け、ついに影が彼をとらえた…。
ステファン・リンドマン37歳、警察官。舌がんの宣告に動揺する彼が目にしたのは、新米のころ指導を受けた先輩が、無惨に殺されたという記事だった。

殺された元警察官、モリーンの住んでいた土地を訪ねたステファンは、独自に捜査を開始する。だが、調べを進める彼の前に、新たな死体が…。次々と明らかになる、先輩警察官の知られざる顔、意外な過去。
病に苦しみ、迫りくる死の恐怖と闘いながら、ステファンは真実を追い求める。
スウェーデン社会の闇と、一人の人間としての警察官ステファンの苦悩を、鮮やかに描き出した傑作。

CWA賞受賞作『目くらましの道』に続く、スウェーデン推理小説の記念碑的作品ついに登場。
↑『スウェーデン推理小説の記念碑的作品』と書かれているけれど 推理小説としてだけでなく社会派の小説としてもとてもいい作品だった

『スウェーデン』が『ナチスドイツ』とこんな関係だったなんて…
作中にもあるように 『学校で習ったのはー略ーまったく別のことだった。スウェーデンは賢さと平衡感覚で、幸いにも戦争に巻き込まれなくてすんだというものだ。当時の政府は厳正なる中立主義を貫き、ドイツの軍隊に国を崩壊されるのを防いだと習った。学校に通っていたころ、スウェーデンにも大勢のナチス信奉者がいたなどということは、聞いたことも読んだこともなかった。』
ここまで明確に意識したことはなかったけれど スウェーデンからナチスドイツの軍隊に志願した若者が多くいたということはとても意外だった

でも 今でこそヒトラーは稀代の悪役だけれど ヒトラーの台頭期は民衆から絶大な支持を得ていたのだから そういう事があっても不思議ではないんだろうな…

そして そういう人達が今もネオナチとして そういう思想を持つ若者たちと組織を作り地下で活動している…
これはどこまで事実を反映してるのかは解らないけれど 今のヨーロッパの移民排斥の流れを見ると リアリティがあるように思います

最近のヨーロッパ諸国のEU離脱の流れや アメリカ大統領の移民排斥や人種差別発言を見ていて 時代の逆行を感じていたので
この小説が2000年に発表されていることを知り かなり前から今の状況の芽があったのだと感じました


最後に作者はこの問題の胆ともいうべき台詞を登場人物に語らせています
『わたしはナチズムがヒトラーとともに死に絶えると思ったことはないわ。邪悪な考えを持つ人間たち、人間蔑視、人種差別は今も厳然として存在します。でも、その思想はいまでは別の名前、別の手段をもっているのよ。今日では戦車で軍隊が戦うような戦争は存在しない。憎悪の対象になる人間たちに対する襲撃はほかの形で表される。下の方から、と言うこともできますね。いまこの国、ヨーロッパ全体は内側から爆発しようとしている。弱者を侮り、移民を襲い、人種を差別することで。それはあらゆるところに見られる。そうじゃありませんか?その動きに対して、わたしたちは断固として対抗する決定的手段をもっていないのです。』

彼は作家として 作品と言う『対抗する手段』を用いたのだと思います
そして この作品がドイツでベストセラーNO1になったということを 人として救いに感じました
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